AWSの特徴
「AWS」とは「Amazon Web Services」の略称で、Amazonが2006年に提供を始めたクラウドサービスのことです。Microsoftが提供している「Microsoft Azure」や、Googleの「GCP(Google Cloud Platform)」と並び、3大クラウドサービスと呼ばれています。
AWSではストレージやデータベース、機械学習など、さまざまなシステムの構築が可能です。インターネット上でサーバーやネットワークリソースを利用できる「パブリッククラウドサービス」として人気が高く、市場シェアは世界一を誇ります。アカウントを作成すると、個人・法人を問わず誰でも利用できる手軽さと、優に150を超える豊富なサービスも特徴です。
AWSでは従量課金制を採用しており、通信料や通信時間など利用した分の料金を支払えばよいため、オンプレミス環境のように高額な初期費用がかかりません。AWSのサービスを活用して、クラウド上でさまざまな機能を組み合わせることで、企業が必要とするシステムを自由に構築できるメリットがあります。
AWSではデータセンターが世界各国に存在し、エリアごとに「リージョン」として分けられています。日本では東京リージョンでデータが保管されていますが、たとえ東京リージョンでデータ障害などの問題が生じた際も、ほかに準備されているアベイラビリティーゾーン(AZ)のデータを利用できるため、システムダウンすることなくいつでもサービスの利用が可能です。また、データセンターでは暗号化によりデータが厳重に保護されるため、そのセキュリティの高さから公共機関や金融機関、大手企業などのシステム構築、インフラ整備にも採用されています。
テレワークの普及もあり、近年ではクラウドサービスを導入する企業が急増しています。そのような中、アクセス集中時も快適なレスポンスで活用できる使いやすさや、データを各地に分散して保管できる安全性、システムを自由に開発できる拡張性などから、AWSは今後も注目を集めていくでしょう。
なおAWSでは、開発者と運用者が連携してシステムの機能更新に関わる「DevOps」を推奨しています。アプリケーション開発者と、仮想サーバーやデータベースなどの構築を行うインフラ開発者、システムの運用を管理する運用者の連携により、AWSはパブリッククラウドのクラウドプラットフォームとして快適な利用が可能になります。
AWS案件 フリーランスに将来性はある?市場動向とニーズについて
AWSのパブリッククラウドでは、Webサイトの運用はもちろん、高いセキュリティと高速データ転送が可能なデータベースやビッグデータ分析、IoTソリューションの構築、業務システムなど、さまざまな機能が利用できます。
こうした機能性の高さから、近年では金融機関や医療機関、教育機関など幅広い業界で利用され始めています。今後もAWSをはじめとするパブリッククラウド市場の成長は見込まれており、クラウドサービスの構築やアプリケーション開発、運用などの案件は安定して供給されると考えられます。
さらにAWSでは、利用者に役立つ新しいサービスが次々提供されています。需要に応じた高品質な機能が続々とリリースされるため、AWSの開発・運用に携わる人材は今後も必要となるでしょう。
また近年では、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用する、「マルチクラウド」という方法も広がりを見せています。マルチクラウドを取り入れる場合、AWSの圧倒的な市場シェアから考えて、AWSを利用しながらほかのパブリッククラウドを追加で利用する企業が多いと思われるため、なおのこと高いニーズが見込めます。
フリーランスエンジニア向けAWS案件の単価相場
フリーランスエンジニア向けAWS案件の月額単価は、65万~85万円程度が相場です。最低単価は大きく下がり20万円代程度、最高単価は100万円以上と、案件によって単価の幅が大きい傾向があります。案件単価は基本的に、AWSの実務経験が長いほど高額になるため、実務経験に乏しい場合は高額案件の取得が難しいかもしれません。AWS案件では月額70万円代のものが特に多いため、実務経験を積みスキルが上がってくるにつれ、その価格帯の案件が取得しやすくなります。
なおAWS案件には、大きく分けて「設計・構築案件」と「運用・保守案件」の2種類があります。運用・保守案件は単価が比較的低い傾向にあり、実務経験が短くても応募可能な案件では月額20万円代~が一般的です。対して、5年以上の実務経験を要する設計・構築案件には、単価相場以上のものが多く見られます。高いスキルを持つ場合やマネジメント経験がある場合には、単価相場がさらに上がり、100万円以上のものを取得できる可能性もあります。
AWS案件を取得するのに必要なスキルは?
では、AWS案件には具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。以下では、AWS案件に必要なスキルをまとめてご紹介します。これらを参考に、今あるスキルを案件取得に役立てたり、新しく有利なスキルを身につけたりして、希望に合った案件の取得を目指しましょう。
インフラエンジニアとしてのスキル
AWS案件では企業のクラウド環境の構築・運用に携わるため、ITインフラ知識が欠かせません。フリーランス向けAWS案件の場合、開発関係では主に「Webアプリケーション開発AWS案件」「業務システム開発AWS案件」の2種類があります。一見、Webアプリケーション開発には必要なさそうに思えますが、オンプレミス環境からクラウド環境への移行業務を含むケースが多いため、インフラエンジニアとしてのスキルの有無は重要です。
インフラエンジニアは、開発するシステムの機能や目的から設計書を作成し、設計書に基づいてシステム構築を行います。そのため、サーバー・ネットワーク・セキュリティ対策・仮想化・クラウドに関する知識やスキルがあると、AWS案件を取得しやすくなります。
AWSのサービス・機能に関する知識
また、AWSにはさまざまな機能を備えたサービスが豊富に揃っています。エンジニアとしてAWSの開発案件を取得するには、AWSで使用できるサービスや機能の特徴などを理解し、開発に活かせるスキルが必要です。後述する認定を取得しておくと、AWSに精通していることの証明となるためおすすめです。
幅広い業界の知識
AWSはさまざまな業界で取り入れられているため、案件によって医療や金融など業界が異なります。それゆえ、システム構築には幅広い業界の知識が求められる場合もあります。SNSやECサイト、BtoB、AI、IoTなどのAWS開発の実務経験があると、案件取得に役立つでしょう。
マネジメントスキル
プロジェクト管理などマネジメントのスキル・経験がある場合には、上流工程での参画ができるため、より高額なAWS案件を取得できる可能性が高まります。AWS案件の勤務条件は?
フリーランスエンジニアの場合、在宅勤務が可能な案件を希望する人もいるかもしれません。フリーランスエンジニア向けAWS案件には、勤務先への常駐案件のほか、在宅案件も多く見られます。
常駐案件の場合は、ほとんどが週5日勤務を条件としていますが、一般的な固定の勤務時間ではなくフレックスタイム制が取り入れられている場合もあるなど、基本的に働きやすい勤務条件です。近年では働き方改革を推進する企業が増えつつあるため、AWS案件の勤務条件は今後、さらに好条件に変わっていく可能性が見込めます。
一方、リモートワーク可能な案件もたくさんありますが、全く出勤する必要がないケースはほとんどありません。リモートワーク可能と記載されていても、たいてい週に数回は出勤しなければならないため、勤務条件はよく確認することが大切です。中には「実務経験○年以上」「会社が許可した人のみ」などを条件としているところもあります。
基本的には、実務経験が豊富なほど好条件の案件を取得しやすい傾向にあります。条件付きであればリモートワークが可能な案件も多いため、多様な働き方をしたい人には適しているでしょう。このようにAWS案件は、自分の希望する勤務条件に近い案件を選びやすい特徴があります。
AWSの勉強方法 難易度は?
AWSについて学ぶなら、「AWS認定」の取得がおすすめです。AWS認定は、AWSの提供元であるAmazonが実施する認定試験に合格すると取得できます。レベルや分野、専門性の異なる資格が11種類用意されており、一番簡単な基礎コース「クラウドプラクティショナー」では、最低6ヶ月間のAWS使用経験と、IT・AWSにおける基礎知識を有するレベルが推奨されます。
次に難易度が高いアソシエイトレベルには、アーキテクト分野の「ソリューションアーキテクト」、運用分野の「SysOpsアドミニストレーター」、開発者分野の「デベロッパー」の3種類があります。これらは最低1年間のAWS使用経験と、それによる問題解決および解決策の実施経験が推奨されるレベルです。
最も難易度の高いプロフェッショナルレベルには、アーキテクト分野の「ソリューションアーキテクト」、開発・運用分野の「DevOpsエンジニア」の2種類があります。前者は試験範囲の広さが難易度に直結しており、相当数のサービスに関する深い理解と、複雑な試験問題への的確な回答が求められます。一方、後者はコストや可用性などを重視しながら最適な運用が行えるかどうかを問われる試験で、さまざまな条件下において正しい回答を出せるスキルが求められます。これらのレベルになると、最低2年間のAWS使用経験に加え、ソリューション設計・運用・トラブルシューティングなどの幅広い経験が推奨されます。
そのほか、分野別に専門知識を認定する資格として、「ネットワーキング」「ビッグデータ」「セキュリティ」「機械学習」「Alexaスキルビルダー」の5種類があります。難易度でいえば、この中では「Alexaスキルビルダー」が一番低く、次点が「機械学習」です。「ネットワーキング」「ビッグデータ」「セキュリティ」の3つは難易度が高い部類に入ります。
試験勉強には、AWS認定試験サイトの無料オンライン講座の利用がおすすめです。試験問題や科目について学んだり質問したりできるので、効果的に学習できます。より充実した内容の有料オンラインクラスルームトレーニングも提供されているので、試験にしっかり備えたい場合はこちらを選ぶのも手です。AWS認定の公式サイトからは、サンプル問題のダウンロードや模擬試験の受験も行えるため、ぜひ活用してみましょう。
また、AWSの試験科目について押さえた問題集なども市販されているので、オンライン講座と併せて活用するのがおすすめです。何度も繰り返し問題を解き、わからないことはオンライン講座で質問などすれば、着実に正答率が上がっていきます。
AWS案件の獲得に活かせる資格とは?
AWS案件の取得時に有利な資格は、前述した認定の中でも特に難易度の高い、プロフェッショナル認定「ソリューションアーキテクト」「DevOpsエンジニア」です。これらを取得しておけば、AWSに精通した人材であるとアピールできます。
また、案件の内容によっては「ネットワーキング」「ビッグデータ」「セキュリティ」「機械学習」「Alexaスキルビルダー」も役に立ちます。これらの専門知識認定を多く取得しておくと、幅広い知識があると判断してもらえるでしょう。
AWS案件の求人 未経験者でも応募できる?
開発実務経験がないエンジニアでも応募できるAWS案件は、あまり多くありません。ですが、中にはAWSでなくともMicrosoft AzureやGCPなど、類似するクラウドサービスでの実務経験があれば応募できる案件も存在します。特に近年では、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行する企業が増加していることもあり、AWSに限らずインフラエンジニアなどの実務経験がある場合には、よく探せば応募可能な案件を見つけられる可能性は高いでしょう。
ただし、AWSでの実務経験がなくても応募できる案件は、単価が比較的低い傾向にあり、最初のうちは低額案件しか取得できない可能性があります。実務経験を重ねるにつれて高額案件も取得できるようになるため、AWSでの実務経験がない方は、まず案件取得に有利な資格を取り、幅広い案件にチャレンジして経験を積んでいくことが大切です。